あらすじ

時は春の初、所は播州高砂の浦。その浦にある高砂の松の木陰を、共に白髪の老人夫婦が来て清める。都に上る途中この浦に立ち寄った肥後國阿蘇の宮の神主友成は、この夫婦を見て、高砂の松というのはどの木かと尋ね、更に國を隔てた高砂の松と住吉の松とを相生の松という譯や、高砂の松のめでたい謂われなどについて訊ねると、夫婦は、故事などを引いて詳しく答えた後、實は私共がその相生の松の精であると打ち明け、住吉でお待ちしましょうと言って、夕波の奇する汀にあった小舟に乗って沖の方へ消え失せた。

―　中入　―

そこで友成も舟で住吉へ行くと、月下に住吉明神が影向されて神舞を舞い、御代萬蔵・國土安穏を祝われる。季節は春の初めであって、長閑な気分があり、又常に変わらぬ緑の色を見せ、然も千年の齢を保つという松を象徴した老人夫婦には夫婦仲の変わる事もなく、共に長寿を保つというめでたさがあり、住吉明神の姿には颯爽たる威厳がある。