同 松の間刃傷の場


あらすじ

 

 自分の家来が師直に賄賂を贈ったとは思いもよらない若狭之助は、今日こそ師直を切ろうと覚悟を決めて松の廊下へとやってくる。ところが師直が平身低頭してあやまるので、怒りをこらえつつ若狭之助は奥へと入っていく。

 なんとか若狭之助の怒りはそらせたものの、屈辱をしいられた師直は怒りのやり場がない。そこへ遅れて現れた塩冶判官に小言を言い始める。おりしも顔世が師直を袖にする意味をこめた古い歌だった。

 師直はてっきり顔世が夫にうちあけたのだろうと腹をたて、塩冶判官をねちねちといびり始める。師直の態度を初めはうけながしていた判官だったが、師直の無礼に刀を抜こうとする。だが師直に殿中で刀を抜けば死罪の上、お家取り潰しだぞと脅され、一旦は思いとどまる。

 だが師直の悪口雑言にとうとうたまりかねた判官は、ついに刀で師直の額に切りつける。だがちょうど近くにいた桃井の家来・加古川本蔵に抱きとめられ、師直に止めをさすことはできない。